
実習がつらかったあの頃の私
私は看護学生の頃、ハラスメントやいじめを経験したわけではありません。
それでも、実習がつらかった記憶は今でも鮮明に残っています。
睡眠時間を削って大量の記録物に向き合い、パンフレットやリハビリに使う物品を作り、翌日の実習に備える毎日。
「今日も眠れなかったな」と思いながら病院へ向かう足取りの重さ。
病棟で働く看護師さんたちを見ながら、「この人たちはみんな、こんな大変な実習を乗り越えてきたのか…」と感じていたことを覚えています。
もちろん、記録を書くことには意味があります。自分の看護を振り返り、学びを整理する大切な時間です。
でも当時の私は、患者さんと関わることよりも「記録を終わらせること」が目的になってしまっていたように思います。
“学ぶための実習”が、いつの間にか“こなすための実習”に変わっていく―そんな感覚がありました。
学生さんに必ず聞いていた「あなたの強みは?」
そんな経験があったからこそ、私が臨床指導者として学生さんと関わる中で、大切にしていたことがあります。
実習初日のオリエンテーションで、学生さんに必ずこう尋ねていました。
「あなたの強みは何? あなたの強みを教えて」
「そんなこと、考えたこともなかった」という学生さんもいました。
「家族からは優しいって言われます」
「話をじっくり聴くことができます」
「周りの人のちょっとした変化に気づけると思います」
「明るいです」 などなど
学生さんには、一人ひとり違う良さがあります。
だからこそ「できていないこと」ばかりに目を向けるのではなく、その人の強みを活かして患者さんと関わってほしいと思っていました。
強みを知ることは、実習を乗り越えるための“心の支え”になります。
弱点を直すことも大切ですが、それ以上に、自分の良さを自分で認めることが、自分らしい看護の土台になると感じています。
相談に届く声から見える“自分を責めてしまう構造”
今、はぐくみネットには、実習や学校生活の中で苦しさを抱えた学生さんたちから、多くの相談が届いています。
「自分は看護師に向いていないのではないか」
「頑張りたいのに動けない」
「指導なのか、ハラスメントなのか分からない」
こうした声に触れるたびに、学生さん自身の強みが置き去りになってしまっているように感じることがあります。
医療現場は忙しく、指導者も余裕がないことがあります。
あいさつが返ってこなかったり、質問しづらい雰囲気の現場もあります。
そのような環境の中、学生さんが自分を責めてしまう構造が生まれやすいのです。それは学生さんのせいではありません。
風土や環境の影響なのに、学生さんが「自分が悪いのではないか」と思ってしまうことが、多くの実習現場で起こっているのです。
だからこそ、はぐくみネットに相談してくれることは、弱さではなく自分を守るための大切な行動だと私は思っています。
自分の強みを大切にしながら学んでほしい
実習には責任があり、患者さんの安全を守る視点も必要です。
学生さんが、睡眠時間を削り心や身体をすり減らしながら学ぶことが、患者さんの安全や本当に良い看護につながるのでしょうか。
看護師になりたいと思う人が、「自分はダメだ」と感じながら学ぶのではなく、「自分の強みを活かしていいんだ」と思える環境が増えてほしい。
しっかり睡眠をとりながら、心身ともに健やかな状態で患者さんと関わってほしい。
そして「看護っておもしろい」と感じられる経験を、一つでも多く積み重ねてほしい。
それが、私が相談員として、指導者として学生さんに関わってきた一人の看護職として、願っていることです。
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