アルパカはぐくみネットの事務局を担当しているアルパカです。
私は、はぐくみネット代表の妻であり、看護学生の息子を実習中の自死で亡くした母です。
「もう二度と息子と同じ思いをする人を出したくない」という気持ちで、代表と一緒に活動しています。
息子のことや団体の活動については、コラムだけでは書ききれない思いがたくさんあるので、はぐくみネットのYouTubeもぜひ見てみてくださいね。
今回は、「自分の学生時代の実習での出来事」についてお話ししたいと思います。
皆さんは、一生懸命やったことをたった一言で否定された経験、ありませんか?
「こんなの、あなたの自己満足よ!」
学生時代の実習で言われたこの言葉、今でも忘れられません。
私はというと、優秀でもなく問題児でもない、ごく普通の学生でした。
先生に特別気に入られているわけでも、嫌われているわけでもない。
実習グループには気の合う友人が2人いて、いつも3人一緒で、交代でそれぞれの下宿に集まり、夕飯を食べながら勉強する毎日。
今思い返すと大変だったけど、とても楽しくて温かい思い出です。
その中で、ひとつだけ、今でもはっきり覚えている出来事があります。
血液内科での1か月実習のときのことです。
受け持ちの患者さんの退院が決まり、教員から「退院パンフレットを作成するように」と指示を受けました。
当時の私、パンフレットを作った経験なんてまったくなくて。
病院から配布された入院時のしおりがあったので、「これがパンフレットってものか!」とそのイメージで参考にしながら、退院後の生活で気をつけることをひとつひとつ調べてまとめました。
体調管理、食事、運動、休養…。
「退院後に少しでも役に立てたら」そんな思いで取り組むうちに、気がついたら数ページにわたる冊子になっていました。
ほとんど徹夜で仕上げたのを覚えています。
翌朝、そのパンフレットを教員に提出しました。
返ってきた言葉が、冒頭の一言です。
「こんなの、あなたの自己満足よ!」
さらに「退院パンフレットはこういうものではない。〇〇さんのを見てみなさい」と言われ、見せてもらったのはA4一枚のシンプルなもの。
正直、「え、こんなシンプルでいいの?」と驚きました。
もし決まった形式があるなら、最初に教えてほしかったな…という気持ちも正直ありました。
後から知ったのですが、そのお手本の学生さんは事前に教員へ作り方を確認していたそうで。
一方の私は、誰にも聞かず自分なりの解釈で突っ走っていたわけです。
そういう違いはあったとはいえ、「自己満足」のひと言で切り捨てられたのは、やっぱりちょっと…ね。
疲れと悔しさで、休憩室で泣いたことを覚えています。
その後、教員からは「まあいいわ。作り直す時間もないし、患者さんに渡してきなさい」と言われ、そのままお渡ししました。
すると患者さんが、
「僕のために頑張って作ってくれたんだね。ありがとう」
と言ってくださって。
その言葉に、本当に救われました。
あのときの教員の関わり方については、今も時々考えます。
最初から否定するんじゃなくて、「何が足りなくて、どう直せばいいのか」を具体的に伝えてくれたら。
他の学生と比べるんじゃなくて、その子の行動の過程や思いにも目を向けてくれたら。
そうした関わりがあれば、受け取る側の感じ方も、きっと違っていたんじゃないかなって思うんです。
実際に、同じ教員から別の学生が「あなたは看護師に向いていないから他の道を考えなさい」と言われていました。
普段は大人びてひょうひょうとしているその子が、涙をためながら「あんな先生大っ嫌い!絶対看護師になってやる!」と怒っていた姿が、今でも印象に残っています。
ちなみに私も、パンフレットの指導を受けたときにムッとした顔をしていたのでしょう。
実習終了後の面談で「あなたはもっと自分の感情をコントロールしなさい」と言われました。
当時は「はい」と答えるしかできなかったけど、悔しかったな〜。
今なら「先生も同じですね」って嫌味のひとつでも言ってやるのに(笑)
今、息子が自死する直前の出来事や、はぐくみネットの活動の中で、改めて感じることがあります。
人は、未熟で当たり前です。分からないなりに、一生懸命考えて行動しています。
だからこそ指導する側には、学生の思いや過程をちゃんと受け止めながら、次につながる形で伝えていく姿勢が大切なんじゃないかなと。
あのときの私のパンフレットは、確かに改善の余地だらけでした。
でも、患者さんのことを考えながら一生懸命取り組んだ気持ちまでが否定されるものではなかったと今は思っています。

